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ばらときつね [創作童話]

童話、また書いてみました。


ばらときつね

大きなおしろの広いお庭の一番奥にそのばらの花はさいていました。
きれいなばら色のたくさんの花びらをもつ、それは美しい花でした。
けれども、その花を見る人はいません。
広いお庭の一番奥まで、だれも来ないのです。
来てくれるのはたった一人、お手入れをする庭師さんだけでした。
庭師さんは忙しいので、ばらの花をゆっくり見る暇もありません。
薔薇の花は誰にも愛されず、寂しく暮らしておりました。

ある日、そこへきつねがやってきました。
きつねはちょっと離れたところから、うっとりとばらを眺めて帰っていきました。
翌日きつねはまたやってきました。
きつねはばらのすぐ近くまで来て、
やあ、きれいだなあ。
何で素敵な花だろう。
ばらの花はにっこりわらって、ありがとう、といいました。
きつねは毎日やってきて、
まいにちきれいだなあ、といいました。
ばらときつねはなかよしになりました。

でも、ばらの命の終わる日がやってきました。
きつねは泣きました。

ばら;ありがとう、きつねさん。
私、今度生まれてくる時もきつねさんにあいたいわ。

きつね;僕は朝焼けを見るたびに、君のことを思い出すよ。
そして幸せな気持ちになるだろう。

ずっと後になって、ばらの種は小鳥にはこばれて、とおくとおくへ・・。
こんどはどんなであいがあるでしょう?
中の一つは空のかなた、B236という小さな星につきました。

                おわり

名作「星の王子さま」へのオマージュです。
B236は王子さまの星です。
きつねは後に王子さまが地球でであうあのきつねです。

「星の王子さま」をまだ読んでいらっしゃらない方、
読んでみてくださいね。
あるいは子供のころ読んだきり、という方、
もう一度読んでみませんか?
「星の王子さま」は大人がよんでこそ面白いお話しだと思います。


おまけ
IMG_0687.JPG
夏の薔薇

星の王子さまの挿絵にある薔薇は紅に見えるのですが、
実は濃いばら色ではないかと思っています。(勝手に^^;)


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sknys

王子の薔薇は特別な花。たった1つの大切な存在‥‥
年内に解散する某アイドル・グループのヒット曲みたいですが^^;
そのことに気づかせてくれた狐が王子との別れ際に
真実を教えてくれます。

「おれの秘密を教えようか。簡単なことさ。心で見ないと物事はよく見えない。肝心なことは目には見えないということだ」

この箇所を読み返すたびに、いつも目頭が熱くなります。
by sknys (2016-09-23 21:06) 

extraway

砂漠に不時着、ということで甦ったのがむかし見た1966年公開の映画で邦題「飛べ! フェニックス」。原題、The flight of the Phenixでしたね。ジェームス・スチュアート。それに重要な役でドイツ人のハーディ・クリューガー。とても印象に残っています。その絶望的な状況。プラモディルレヴェルの設計経験しかないクリューガー演ずる技術者が、実際の飛行不能な破損した飛行機を修復して再び飛び立つという、ドラマ。

童話は、さまざまに読める。それだけにまた容易ではない部分も感じますね。これはこういうことですよ、と促されるだけでは済まないものもあると思うし。ひとつの家がやっと建つ位の広さしかないB236小惑星でしょう? 別次元に入らないといけませんね。
by extraway (2016-09-27 15:56) 

ぶーけ

sknysさん、
いい言葉ですよね。私も大好きです。^^
某ヒット曲の作詞家さんの頭の中にはもしかしてこのお話しがあったりして?

extrawayさん、
飛べ! フェニックス」は観たことないですが、ちょうど同じ状況ですね。
星の王子様は理屈を考えだしたらそもそも成り立たないお話しですよね。ありえないことばかりですもの。
でも、大好きです。^^
by ぶーけ (2016-09-28 17:34) 

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