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薔薇のゆううつ [創作童話]

お話しはまだありますの。
お暇があったら読んでくださいませ。

薔薇のゆううつ

大きな白いお城の広いお庭に薔薇の花が咲いていました。
薔薇の花は悩んでいました。
どうして私はここにいるの?
小鳥さんがうらやましい。
私も遠くに飛んでいきたい。

翌日、お手入れに来たのは、まだ若い見習いの庭師さんでした。
庭師さんは薔薇をみると、目を丸くして、
うっとりとしていいました。
なんてきれいなんだろう。
薔薇の花はにっこり笑ってありがとう、といいました。

庭師さんに大切にされて、
薔薇は幸せでした。
でも、やっぱり遠くに行きたいわ。
お城の外、ってどんななのかしら?

あるとき庭師さんは思いつめたような顔をして、
薔薇のところにやってきました。
僕はどうしたらいいだろう?
あのひとは遠くに行ってしまう。
もう2度と会えないだろう。

あの人?ちょっと考えて、思いつきました。
ああ、お姫様。

薔薇は反対側の茂みの奥に時々入っていく、
若いばら色の頬の姫君を思い出しました。
薔薇はにっこり笑って、
私をその方に差し上げたら?
貴方の思いを伝えてあげる。

庭師さんは勇気をふりしぼって、薔薇を姫君に差し出しました。
姫君はにっこり笑って薔薇をうけとり、
きれいな金髪にさしました。
薔薇は姫君が好きでした。
庭師さんはね、お姫様が好きなのよ。
そっとつぶやいてみました。
でも、姫君には聞こえません。

聞こえませんでしたが、姫君は振り返って、
庭師さんに手を振りました。
庭師はとても幸せになりました。
でも、薔薇は少しゆううつになりました。
私ではだめだったの?

姫君はお城の入り口で、召使を呼んで、
薔薇の花を生けるようにいいました。

その時、一羽の小鳥が飛んできて、
薔薇の花をくわえて飛びさりました。
高く高く、広いお庭を超えて、
お城の外へ。

薔薇の花は初めてお庭以外の場所を見ました。
森や野原。町もありました。
まあ、なんて広いの!
なんて素敵!

薔薇の花はしばらくして、ふと下の方にかわいいお家をみつけました。
小さなお庭もありました。
あそこに行きたいわ。
小鳥はうなづき、小さなお家のお庭にばらをそっと置きました。

そこはお城の庭師さんの家でした。
するとあら不思議。
薔薇は少女の姿になりました。
その顔はばら色の頬の若い姫君によく似ていました。

家に帰った庭師さんは少女を見て驚きました。

それから、薔薇の少女と庭師さんはずっとずっと幸せに暮らしました。

おわり

IMG_0849.JPG
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コメント 4

アールグレイ

素敵なお話ですね^^
美しい光景が浮かびます。
by アールグレイ (2016-12-20 20:09) 

sknys

薔薇と姫君と庭師の三角関係のようにも思えます。
姫君は薔薇の花が好き。
薔薇は庭師のことが好きなのに、庭師は姫君に叶わない恋をしている。

薔薇は魔女に魔法をかけられた姫君の双子の妹でした。
庭に幽閉されていた「塔の中の姫君」が解放されて、
少女の姿に戻ったのです^^

数年後、隣国の皇太子の許へ嫁いだ姫君が離縁されて城に戻って来ます。
そして、薔薇少女と同じように、
魔法にかけられて「古びた彫像」にされていた王子と結婚する‥‥
というアナザー・ストーリはどうかしら?
by sknys (2016-12-22 19:30) 

extraway

気になる「私ではだめだったの?」ですねえ。薔薇さんにしてのそのあたりの屈折。

ファンタジー世界はげんじつから遠くて良いですね。普段は縁遠くてぶーけさんのブログで触れられる位です。それだけにたのしめますよ。
by extraway (2016-12-24 08:52) 

ぶーけ

アールグレイさん、
ありがとうございます。挿絵がつけられるといいな、って思いますが、なかなか。。

sknysさん、
姫君の好きな薔薇は違う薔薇なので(前作参照)正確には三角関係ではないのです。

アナザー・ストーリー、ありがとうございます。^^
素敵ですね。
実は私もちょっと考えていたのがあって、
少し違うのですが、やっぱり石像が重要なファクターです。
またいつか書きます。
sknysさんも書いてみてくだい。

extrawayさん、
薔薇さんも女の子なんです。
女の子は難しいんです。^^

いつも見て下さってありがとうございます。
ファンタジーは大好きです。^^
by ぶーけ (2016-12-28 16:41) 

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