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ばらと姫君 [創作童話]

この前ちょっとマイブームだった童話です。
ずっとほかってあったけど、
せっかく書いたので、載せようと。


ばらと姫君

大きなクリーム色のお城の、広いお庭の片隅に姫君の秘密の場所がありました。
そこには古い彫像があって、ばらの樹が絡んでいました。
毎年春になると、きれいな花が咲くのです。

姫君はおてんばで、ダンスが好きで、
お勉強を抜け出してはお庭に駆け出して、
先生を困らせていました。
でも、天使のような笑顔でにっこりわらって、ごめんなさい、と言われると、
どんな厳しい先生もそれ以上何も言えないのでした。

お庭の手入れをする庭師さんは、姫君が薔薇の花をお好きなことを知っていました。
かわいらしいお姫様のために、庭師はその薔薇を特に念入りにお世話をしました。
ばらの花はますます美しく、
そしてお姫様もますます美しく、
ばらの花に口づけをする姫君は絵にも描けない美しさでありました。

姫君は14歳になりました。
結婚することになりました。
お相手は隣国の皇太子です。

姫君の明るい笑顔にはその日から影がさしました。

古びた彫像は薔薇と姫君が好きでした。
姫君はお嫁にいく前、彫像とばらにお別れに来ました。
さようなら。
きっともう会えないわ。
元気でね。
姫君が彫像にそっとキスをすると、古びた彫像の半ば閉じた美しい瞳が
きらりと光り、一筋のしずくが流れました。
薔薇ははらりと散りました。

遠くからその姿を見ていた庭師は、姫君がいなくなった後も、
ばらを大切に育てました。
ばらの花の種はやがて小鳥に運ばれて、
姫君の嫁ぎ先の、ピンクのお城に着きました。

おわり


クリーム色のお城はシェーンブルン宮殿。
ピンクのお城はヴェルサイユのトリアノン宮殿。
姫君の名前はおわかりでしょうか?

まあ、言ったもの勝ちということで。^^;

IMG_0846.JPG

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コメント 2

extraway

「ほかって」という言い方、面白いですね。私の知らなかった、何となくというのか、分かるんだけれどもこちらでは使わない言葉ですからね。

Marieというお姫様のお話。似たようなもの、前にもあったような。薔薇の花は、運ばれて・・・・・・。メルヘン世界。思うんですが、冊子に、あるいは夢のある本に、いずれまとめることを想定されたら良いのではないかな、と思います。行き先があったほうが、お話もよろこぶたろうし・・・・ということで。
by extraway (2016-12-18 23:46) 

ぶーけ

extrawayさん
ほかって、って方言なんですか?
知りませんでした。^^;

お姫様の話、前も書きましたっけ?
お話、まとまめて本にするサービスがあって、
とっても簡単にできるらしいです。(お友達が自分の作品集を作ってました。絵の)
一回何かでやってみたいとは思います。^^
by ぶーけ (2016-12-20 19:23) 

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