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再び会う日(薔薇と姫君 その2) [創作童話]

前に書いたお話しの続きです。

再び会う日 (薔薇と姫君 その2)

姫君は遠い国からお嫁にきました。
そこは豊かで美しい国でした。
でも肝心の王子さまは無口で、引っ込み思案で、
少しも姫君とお話ししてくれません。

大きなお城の中で、大勢の人にかしづかれて、
綺麗なドレスに身を包み、その美しさをたたえられても、
姫君はすこしもうれしくありませんでした。

大好きだった昔のお庭に行きたい。
残してきた彫像に会いたい。
薔薇さんは元気かしら?
姫君は遠い祖国をなつかしみ、大好きだったお庭を恋しく思っておりました。

そんなある日、離宮のお庭で、懐かしいばらの花に会いました。
まあ、こんなところに?
ばらはにっこり笑っていいました。
小鳥さんが運んでくださいましたの。
まあ、なんて優しい小鳥さん。
こんなに遠くまで大変だったでしょう。
小鳥は姫君の手にそっととまると、
羽を広げてお辞儀をしました。

お姫様、あと少し。
もうすこしだけご辛抱くださいませね。
薔薇はそっとささやきました。
小鳥もさえずりました。
そう、あと少し。
・・あと少し?
何が少しなのかしら?姫君は不思議でした。

そこへ、侍女たちが急いでやってきました。
まあ、こんなところで。
皆さまお待ちかねですわ。
さあ早くお支度を。

あと少しって、何かしら?
いぶかしく思いながら、退屈な宮殿に
姫君は戻っていきました。

      つづく

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薔薇のゆううつ [創作童話]

お話しはまだありますの。
お暇があったら読んでくださいませ。

薔薇のゆううつ

大きな白いお城の広いお庭に薔薇の花が咲いていました。
薔薇の花は悩んでいました。
どうして私はここにいるの?
小鳥さんがうらやましい。
私も遠くに飛んでいきたい。

翌日、お手入れに来たのは、まだ若い見習いの庭師さんでした。
庭師さんは薔薇をみると、目を丸くして、
うっとりとしていいました。
なんてきれいなんだろう。
薔薇の花はにっこり笑ってありがとう、といいました。

庭師さんに大切にされて、
薔薇は幸せでした。
でも、やっぱり遠くに行きたいわ。
お城の外、ってどんななのかしら?

あるとき庭師さんは思いつめたような顔をして、
薔薇のところにやってきました。
僕はどうしたらいいだろう?
あのひとは遠くに行ってしまう。
もう2度と会えないだろう。

あの人?ちょっと考えて、思いつきました。
ああ、お姫様。

薔薇は反対側の茂みの奥に時々入っていく、
若いばら色の頬の姫君を思い出しました。
薔薇はにっこり笑って、
私をその方に差し上げたら?
貴方の思いを伝えてあげる。

庭師さんは勇気をふりしぼって、薔薇を姫君に差し出しました。
姫君はにっこり笑って薔薇をうけとり、
きれいな金髪にさしました。
薔薇は姫君が好きでした。
庭師さんはね、お姫様が好きなのよ。
そっとつぶやいてみました。
でも、姫君には聞こえません。

聞こえませんでしたが、姫君は振り返って、
庭師さんに手を振りました。
庭師はとても幸せになりました。
でも、薔薇は少しゆううつになりました。
私ではだめだったの?

姫君はお城の入り口で、召使を呼んで、
薔薇の花を生けるようにいいました。

その時、一羽の小鳥が飛んできて、
薔薇の花をくわえて飛びさりました。
高く高く、広いお庭を超えて、
お城の外へ。

薔薇の花は初めてお庭以外の場所を見ました。
森や野原。町もありました。
まあ、なんて広いの!
なんて素敵!

薔薇の花はしばらくして、ふと下の方にかわいいお家をみつけました。
小さなお庭もありました。
あそこに行きたいわ。
小鳥はうなづき、小さなお家のお庭にばらをそっと置きました。

そこはお城の庭師さんの家でした。
するとあら不思議。
薔薇は少女の姿になりました。
その顔はばら色の頬の若い姫君によく似ていました。

家に帰った庭師さんは少女を見て驚きました。

それから、薔薇の少女と庭師さんはずっとずっと幸せに暮らしました。

おわり

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ばらと姫君 [創作童話]

この前ちょっとマイブームだった童話です。
ずっとほかってあったけど、
せっかく書いたので、載せようと。


ばらと姫君

大きなクリーム色のお城の、広いお庭の片隅に姫君の秘密の場所がありました。
そこには古い彫像があって、ばらの樹が絡んでいました。
毎年春になると、きれいな花が咲くのです。

姫君はおてんばで、ダンスが好きで、
お勉強を抜け出してはお庭に駆け出して、
先生を困らせていました。
でも、天使のような笑顔でにっこりわらって、ごめんなさい、と言われると、
どんな厳しい先生もそれ以上何も言えないのでした。

お庭の手入れをする庭師さんは、姫君が薔薇の花をお好きなことを知っていました。
かわいらしいお姫様のために、庭師はその薔薇を特に念入りにお世話をしました。
ばらの花はますます美しく、
そしてお姫様もますます美しく、
ばらの花に口づけをする姫君は絵にも描けない美しさでありました。

姫君は14歳になりました。
結婚することになりました。
お相手は隣国の皇太子です。

姫君の明るい笑顔にはその日から影がさしました。

古びた彫像は薔薇と姫君が好きでした。
姫君はお嫁にいく前、彫像とばらにお別れに来ました。
さようなら。
きっともう会えないわ。
元気でね。
姫君が彫像にそっとキスをすると、古びた彫像の半ば閉じた美しい瞳が
きらりと光り、一筋のしずくが流れました。
薔薇ははらりと散りました。

遠くからその姿を見ていた庭師は、姫君がいなくなった後も、
ばらを大切に育てました。
ばらの花の種はやがて小鳥に運ばれて、
姫君の嫁ぎ先の、ピンクのお城に着きました。

おわり


クリーム色のお城はシェーンブルン宮殿。
ピンクのお城はヴェルサイユのトリアノン宮殿。
姫君の名前はおわかりでしょうか?

まあ、言ったもの勝ちということで。^^;

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ばらときつね [創作童話]

童話、また書いてみました。


ばらときつね

大きなおしろの広いお庭の一番奥にそのばらの花はさいていました。
きれいなばら色のたくさんの花びらをもつ、それは美しい花でした。
けれども、その花を見る人はいません。
広いお庭の一番奥まで、だれも来ないのです。
来てくれるのはたった一人、お手入れをする庭師さんだけでした。
庭師さんは忙しいので、ばらの花をゆっくり見る暇もありません。
薔薇の花は誰にも愛されず、寂しく暮らしておりました。

ある日、そこへきつねがやってきました。
きつねはちょっと離れたところから、うっとりとばらを眺めて帰っていきました。
翌日きつねはまたやってきました。
きつねはばらのすぐ近くまで来て、
やあ、きれいだなあ。
何で素敵な花だろう。
ばらの花はにっこりわらって、ありがとう、といいました。
きつねは毎日やってきて、
まいにちきれいだなあ、といいました。
ばらときつねはなかよしになりました。

でも、ばらの命の終わる日がやってきました。
きつねは泣きました。

ばら;ありがとう、きつねさん。
私、今度生まれてくる時もきつねさんにあいたいわ。

きつね;僕は朝焼けを見るたびに、君のことを思い出すよ。
そして幸せな気持ちになるだろう。

ずっと後になって、ばらの種は小鳥にはこばれて、とおくとおくへ・・。
こんどはどんなであいがあるでしょう?
中の一つは空のかなた、B236という小さな星につきました。

                おわり

名作「星の王子さま」へのオマージュです。
B236は王子さまの星です。
きつねは後に王子さまが地球でであうあのきつねです。

「星の王子さま」をまだ読んでいらっしゃらない方、
読んでみてくださいね。
あるいは子供のころ読んだきり、という方、
もう一度読んでみませんか?
「星の王子さま」は大人がよんでこそ面白いお話しだと思います。


おまけ
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夏の薔薇

星の王子さまの挿絵にある薔薇は紅に見えるのですが、
実は濃いばら色ではないかと思っています。(勝手に^^;)


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亀になりたかったライオン(創作童話) [創作童話]

なんとなっく、童話書いてみました。
お暇だったら読んでみてくださいね。^^

「亀になりたかったライオン」

ライオンのレオくんは お父さんとお母さんと、サバンナでくらしていました。

サバンナは広くて、草がたくさんあって、いろんな動物がいるところです。

まだ小さいレオくんは 池にお散歩に行くのが好きでした。


ある日、レオくんは池のほとりで、大きな亀さんにあいました。

亀さんはレオくんをみるとにっこり笑って、こんにちは、と言いました。

レオくんも、こんにちは、と言いました。

レオくんはしばらく水遊びをして、お家に帰りました。


翌日、池にいくと、また亀さんが日向ぼっこをしていました。

レオくんは亀さんにご挨拶して、それから、

ここで何してるの?と聞きました。

亀さんは、日向ぼっこだよ。気持ちいいよ。と教えてくれました。

レオくんは真似して見ました。

本当だ、気持ちいいね。

それから、毎日、レオくんは亀さんと一緒にひなたぼっこをしました。


ある日、シマウマさんがお水を飲みにやってきました。

シマウマさんはレオくんをみて、びっくりしたけど、

レオくんはまた小さいし、亀さんと日向ぼっこをしている姿がかわいくて、

こんにちは、と言いました。

レオくんも、こんにちは、と言いました。

僕たちね、ひなたぼっこしてるんだ、気持ちいいよ、とレオくんは言いました。

シマウマさんは、にっこり笑って、

気持ち良さそうだね、でも、僕はいかなくちゃ、と言いました。


シマウマさんは翌日もやってきました。

レオくんはシマウマさんとも仲良しになりました。

シマウマさんは物知りで、色んなお話をしてくれました。


でも、ある日、ライオンのお父さんがやってきました。

シマウマさんはお父さんの姿をみるとあわてて逃げ出しました。

レオくんはびっくりして、お父さんは優しいよ、と言いかけましたが、

その瞬間、お父さんはシマウマさんに襲いかかりました。


その日、レオくんのお家の晩御飯はシマウマさんでした。

レオくんは一口も食べられませんでした。


次の日、レオくんはまた池に行きました。

いつものようにひなたぼっこをしている亀さんをみて、

レオくんは泣きだしてしまいました。

亀さんは「しかたがないことなんだよ。」

と慰めてくれましたが、レオくんはいっそう悲しくなりました。

僕も亀さんだったらよかったのに。


レオくんはそれから1週間、何も食べませんでした。

段々やせて弱っていく姿をみて、亀さんは心配でした。

いきものなんだからね、食べなくちゃいけないんだよ。

君は悪くないよ。

お父さんも悪くない。

誰も悪くないんだ。


その日、お母さんがお肉をもってきてくれました。

そして、これはシマウマさんのじゃないから、と言いました。

レオくんは食べまいとしましたが、おいしそうな匂い。

お腹ぺこぺこのレオくんは思わず、食いついてしまいました。

レオ君は泣きました。


時が過ぎ、レオくんはタテガミも生え揃い、りっぱなライオンになりました。

狩も上手になりました。

でも、レオくんはシマウマだけは決して食べようとしませんでした。

いまでもレオくんは亀さんと日向ぼっこをします。

平和な時間に、レオくんは今度は亀さんに生まれたいな、と思うのでした。


                おわり



おまけ
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この夏、薔薇さんたちはがんばりました。
ひらひらして、花びら少な目の可憐な薔薇さんたちも大好きです。^^



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